#1 デザインを科学する

商業グラフィックデザインについて

以前、ガイダンスの際に「デザインはそもそも機能である」と説明しました。
広告グラフィックデザインの役割は情報の伝達です。情報を受信者に対して 発信者が意図したように受け取ってもらうための 仕掛け といえます。
その仕掛けを「機能 = デザイン」とよんでいいでしょう。
※「商業」とつけたのは芸術や工業と区別するためです。クライアントからデザイン業務を「請け負った」状態と限定します。

グラフィックデザインの科学的みかた

デザインは「生みだす」ものではなく、観察・実験・数字をもちいた解析を使い、すでにある答えを「導きだす」ものだと考えられます。
よって、初期の段階では芸術的・美的センスは必要ありません。答えを導き出す作業(レイアウト)と美しく仕上げる(デザイン)作業を分けて考えます。

レイアウトについて

物理学・化学などの自然科学や、社会学・心理学などの社会科学といった恒久性の高い知識を使って、デザインを科学するとレイアウトが完成します。

観察

伝えたい情報の内容を整理・把握し、情報の対象となる人物がどういった内容のコンテンツにどのように反応するのかを観察する。
普段よりそのような観察データを蓄積しておく事が必要。

実験

対象者の見たままの反応をただ眺めるだけではなく、クライアントやデザイナーの思い込みなどの不純物を見抜いて取り除く工夫。(※ガリレオの落体の法則を参照) ユーザーの目線はどのように動くか、この色・形だとどのような印象を受けるのか。複数の案出し作業が必要。 また、作成したデザインを第三者に見せた場合の感想により修正を加える。

数字をもちいた解析

既知きちのデータやアクセス解析などのデータを用いて、 デザインの根拠の裏付け・確証エビデンスをとる。

これらの手法を用いて 問題 (伝えたい情報)を 解決 (届ける)させることができるデザインができます。

センスに任せない

センスとは皆さんが生きてきた人生の全てです。これまで見たこと、学んだこと、人間関係など全てです。
成果物としてのデザインは否定されることがままありますが、センスやひらめきに任せて作ってしまうとあなた自身を否定されていることと同様となり、 精神的に辛いものがあります。
個人(の人生)を否定されると、感情的な反論を伴ってしまい議論になりません。
よって、観察・実験・数字をつかった科学的なデザインを心がけ、否定・反論に対して科学的に反証するようにしましょう。

実にビジネスにおけるコミュニケーションとは科学的なものであります。

#2 観察(与件の整理)

問題の内容を把握する

デザインの第一段階として「与件の整理」というものがあります。デザインをする理由と目的です。
クライアントや上司から1枚の紙で来ることもあれば、電話(口頭)のみで指示をうけることもあります。

紙面で指示が来なかった場合でも「与件の整理」という文章をテキストエディタにベタ打ちで構わないので作成し、 指示を受けた相手にメールなりの方法で「この内容でずれていませんか?」という確認を取ることが必要です。 これを「前提条件のすりあわせ」ともいい、目的(たどり着くべき山の頂上)に相違がないかを図るためのものです。

この作業を行わないと「認識の違い」という、ビジネスマンが絶対に使ってはいけない言い訳をすることになりますので気をつけましょう。

 1. 与件の目的
 2. クライアントの要望
 3. ご支給いただくもの
 4. 納期・スケジュール

このあたりが必須項目です。バナーなど簡単なものはこの程度で結構ですし、納期が30分後・当日程度のものであったり、すでに制作回数を重ねた相手の場合は、 文章化・明文化めいぶんかせずに、口頭で進めても良いでしょう。 ただし、慣れるまでは自分のために与件整理することをオススメします。
与件整理メモをダウンロード

逆に、クライントや上司が与件を整理できていないケースもあります。その場合は、 ダウンロードした内容に沿って与件を聞き出す ヒアリング を行いましょう。

#3 実験(別案の作成)

デザイン・バリエーションの必要性

与件を整理し回答としてのデザインを導き出そうとするときの、実験の数だけバリエーションができるので必ず発生するはずです。 バリエーションが少ない時、実験の数も少ないということがいえます。

バリエーションのメリットとしては以下の2点あげられます。

 1. より正解に近い回答を出すために必要なため。
 2. クライアントに「気づき」と「信頼」を与えるため。
 

別案とバリエーション

例えばソファ販売店のバナー制作の案件があったとします。コピーは決まってたとします。

以下は別案です。
掲載される媒体や対象とするターゲットによって表現するデザイン アプローチ が異なるという「実験」の結果です。 与件があやふやだった場合はこのように複数案を提案したほうが良いでしょう。

以下は別案ではなくバリエーションです。
写真が同一でトリミングや書体やレイアウトの変化程度の操作は バリエーション と呼ばれ、別案とは言えません。 案になる前の段階という認識で良いでしょう。

#4 数字(裏付けとなる数字)

市場調査、Webアナリティクス、マーケティングデータ

デザインの裏付けとなるデータを収集することが大事です。
以下は競合サイトのアナリティクスを計測するサービスの画面です。このようなデータを使い、なぜ色や形がこのような形態になったかの裏付けとします。

他にもGoogle Analyticsや、市場調査会社に調査を依頼したり、足を使って情報を得るフィールドワークなどで、日々、情報を収集します。
総務省統計局 や、各業界のサイトからも(信憑性はともかく)統計データを取ることができます。

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